工業用ヒーターの開発,設計,製作,販売
株式会社河合電器製作所 View Company Info株式会社河合電器製作所は、さまざまな工業用ヒーターの企画、製造、販売を行っている。1929年、名古屋市に創業し、「キング印」「ホープ印」の電気ハンダゴテの製造からスタートした。
以来80年以上に渡り、『熱』を生み出すヒーターの製造を続けてきた。2006年にはアメリカ・シリコンバレーに進出し、主に半導体関連の製造装置に使用するヒーターをオーダーメイドで設計・販売している。
2007年には、カートリッジヒーター、シリコンラバーヒーターの2製品に対して、UL安全規格認証を取得。
2013年半導体ガスライン加熱ヒーターのULを追加取得、UL Vol2 Sec.2 ASH-200追加するなど、製品安全性規格を確立し、アメリカで確固たる地盤を築いている。
今回は、アメリカ・シリコンバレー在住の技術課長兼北米担当マネージャー川合基之氏、日本でアメリカ向け製品の製造を統括する製造2部マネージャー・早川新太郎氏、医療用ヒーターの販売を統括する名古屋営業所セールスマネージャー・新有起奈氏にお話をうかがった。
ルールを打ち破る
20世紀後半から21世紀にかけて、日本の多くの業界が中国生産を本格化させ始めた頃、河合電器製作所も中国にパートナーを見出し、生産をスタートさせた。気がつけば、日本での生産、特に量産案件は減少していった。
当時、日本でものづくりの最前線に関われる技術職として働いていた川合氏は、そんな雰囲気を感じながら「もう一度、自分たち『ものづくり』について考え直さなければならない。新しい何かに挑戦し、生み出す必要がある」という想いを抱いていたそうだ。
「当時の河合電器製作所にとっては、製品をいかに美しく、そして壊れないように製造するか、いかに管理された状態の中で製造するかが、クライアントからの要求事項でした。しかしながら、その要求を満たす形で製造できるものは中国生産に切り替えられ、日本の製造現場で何を製造すべきか分からない状況に陥りつつありました。そんな中で、河合電器製作所は設計から製造、販売までを一貫して社内でできる体制が整っていることに改めて気づいたんです」
そこで、10年ほど前からさまざまな業界の企業に対し、ヒアリングしたニーズに応える提案型の営業スタイルに取り組み始めた。すると、あらゆる産業や業界で『熱』に対するニーズは存在し、それは日本も世界も変わらないことが分かってきた。
日本企業のアメリカンドリーム
提案型の営業スタイルに取り組んでいた真っ最中の2006年、アメリカでアメリカ製のヒーターを使用していた日系企業より『日本製ヒーターを試してみたい』と連絡が入った。家電製品から工業用まで、ニーズをヒアリングしながらオーダーメイドで多くのヒーターを製造してきた河合電器製作所だが、アメリカからの発注はこの時が初めてだった。
川合氏はこの仕事を絶対受注に結びつけたい、と考えた。
「これまでアメリカ製ヒーターを使っていた日系アメリカ企業が、日本製に変更したいと当社に連絡をくれました。事業をグローバル化するチャンスだ、新しい挑戦は世界進出だ、と考えました」
設計の段階から、日本でのビジネスでは考えられない多くの困難が立ちはだかった。
「日本製の素材が適合しないんです。さらにアメリカから素材を取り寄せようにも、輸入方法がわからない。しかも納期は日本よりも断然短い。完成品に近い段階から試作品を作り込む日本に対し、短い期間で試作品を作りながら改良を重ねるスタイルのアメリカ。日本とアメリカのビジネスの違いを体感しました」
それでも初めてのアメリカ企業とのビジネスを、どうしても成功させたかった川合氏は、アメリカ赴任を願い出て現地でビジネスに取り組むことに。
「アメリカには、ヒーターに詳しくないお客様のもとへ赴いて『こんなヒーターはどうですか?』と、提案から始まるビジネススタイルがありました。これこそ当社が目指すべき方向だと感じたのです。今はシリコンバレーを拠点に、アメリカ企業をターゲットにしてビジネスを展開しています」
アメリカにある日系企業ではなく、アメリカ企業をターゲットにするのはなぜか。その理由を川合氏にたずねた。
「ひと言で言えば、『アメリカ=世界』だからです。アメリカ企業に商品を販売すると、その商品は世界中に拡散していく。河合電器製作所のヒーターも一緒に世界に広がり、世界中で使われる。アメリカじゃなく世界を舞台に見据えているからです」
現在、河合電器製作所のヒーターは、日本はもとよりシンガポール、ドイツ、アメリカなど、大きな半導体工場がある国にはすべて出荷されている。
アメリカでも品質にこだわり続ける
アメリカ進出に際し、日本とは多くの点で違いがあったと語る川合氏。
「アメリカには全国民が共有する単独の文化が存在しない。特にシリコンバレーは、あらゆる人種が集まっています。各会社ごとではなく、各担当者ごとに考えていることや考え方が異なります。その中でも共通しているのは、設計変更の頻度が多くスピードも速い点です」
日本とは勝手が違えど、アメリカでも十分に勝負できる、と川合氏。
「ヒーターが備える『あたためる』という機能を必要とする場合、ヒーターの代替え品がない上、動作に不可欠な部品であるケースが非常に多い。重要な部品にもかかわらず、アメリカでは故障が多くて高価、しかも製造に時間が掛かるなど、無い方が良いと思われている部品なんです。だからこそ、アメリカには大きなビジネスチャンスがあると考えました」
日本の製品は、今のアメリカ市場に非常にマッチすると語る川合氏。一番の強みは、やはり日本が誇る『品質』だ。
「アメリカでは過剰品質と言われることもありますが、本質的にはみんな良い製品が欲しいんですよ。要はコストとのバランスだけ。日本人として日本製の製品を提供する以上、日本の精度や品質基準に適合したものだけを出荷しますし、そこに妥協するつもりはありません」
アメリカ向け製品も、試作からすべて日本の工場で製造することを基本にしている。
「当社の製品は基本的にすべてオーダーメイドの手づくりにもかかわらず、精度の高い製品が求められます。今は日本でしか作れませんが、だからこそ当社の強みであるとも考えています」
また、日本で製造を行うことで時差を活用し、アメリカ人も驚くスピードを生み出しているという。
「日本の仕事が始まる朝9時が、シリコンバレーで仕事が終わる夕方6時。うまく一日のタスクを受け渡すことができています。質問や原因究明など、ちょっとした問い合わせなら翌朝には回答できる。このスピード感はアメリカでもそうありません」
実際にアメリカに進出し、成功を収める企業として、アメリカ市場における日本の製造業の強みはどう考えているのだろうか。
「すべては『信頼感』。納期を守らない、品質が約束と違う、期待と異なる、といった嘘をつかないこと。信頼感を大切にするのは日本もアメリカも同じなんです」
製造現場もゼロから再構築
アメリカ・シリコンバレーに渡り、ビジネスを展開する川合氏を日本の製造現場で支えるのが、製造2部マネージャーの早川新太郎氏だ。川合氏の要望に応えるために、現場の仕組みや体制などをゼロから構築した。
「今までの古い文化ややり方を捨て、ゼロから再構築することで新しい文化が現場に生まれました。だからアメリカのスピード感に対応できているのでしょう。スピード重視の姿勢は、アメリカと日本で意識が一致しており、川合さんのオーダーに対応できた時の製造現場の達成感や満足感は、大きなモチベーションになっています」
新しい製造の仕組みは、納期から逆算して工程を組み、人材や機械を個別の案件にあわせて弾力的に運用する。それをすべて早川氏自身が行い、各部署に指示を出す。
「完成までの工程を組み、設計をはじめとした他部署と毎日事細かに調整する方法を選択しました。以前は他部署に応援要請をすることはほとんどありませんでしたが、今は別の工場から応援を求めることもあります」
成功体験の水平展開を目指す
こうして、半導体関連ヒーターで培った海外ビジネスのノウハウ。河合電器製作所では、蓄積したノウハウを、異なる分野のビジネスに展開しようとしている。その分野とは、医療。医療分野の海外展開について、現状を新有起奈氏に話を聞いた。
「実は当社製品は、すでに医療分野でも数多く採用されています。特に多いのが液体の加温・保温ヒーターで、人工透析の機械に搭載されているケースが多いですね。ダイアライザーの直接加熱はもちろん、ほかにも分析装置や細胞活動促進機器などへの利用ニーズが高いですね」
すでに、日本国内では医療系展示会への出展などを行い、『医療用ヒーターの河合電器製作所』というアピールを開始しているが、海外への展開はこれから。
「今は海外の展示会出展のために視察を重ねながら、出展している医療系機器メーカーに逆提案したりしています。おおむね反応は良好で、半導体ヒーター同様、各社のニーズや要望にあわせて『こんなあたため方はどうですか』と提案するビジネススタイルで、海外進出を目指していきます」
医療分野における海外進出の課題は、日本よりも厳しい品質基準。しかし、河合電器製作所の技術力なら問題なくクリアできるレベルだという。
「当社のセールスポイントである安全性と軽量小型化は、医療分野で最も重視される部分です。また透明フィルムを用いた製品など、医療分野への進出を見越してニーズに対応した製品も開発しました。同時に北米全体をカバーできる販売代理店体制を整えるべく、準備を始めています」
医療と環境が将来のターゲット
半導体関連機器のヒーターで海外進出を果たした河合電器製作所。今後の展開について新氏に話を聞いた。
「日本国内では医療と環境の分野に注力して事業を進めていきます。海外では、前述の医療分野をはじめとした産業分野に、半導体関連事業で培った海外進出のノウハウを水平展開していきたい。医療機器市場、特に生体機能・補助代行分野は、アメリカが非常に強い上、当社が国内で実績を持つ分野であり、ここを主軸に狙うことになるでしょう」
また早川氏によれば、まだまだ製造現場も変化の過渡期にあるという。
「海外からのオーダーに対応できる体制が整っているのはごく一部。海外オーダーに対応できるノウハウを共有し、工場内での水平展開を進めていきます。河合電器製作所は確実に変化を遂げていくでしょう」
川合氏は、シリコンバレーから世界一を目指す。
「アメリカでビジネスを継続するには、ピンポイントでもいいから、どこか世界一じゃなきゃダメ。お客様のニーズをヒアリングし、最適なヒーターを提案するというビジネスの仕組みは、世界一になれる素養を十分に備えています。 アメリカでも中国でもヒーターは作れる。でも、アメリカ人にメイド・イン・ジャパンじゃなきゃダメだ、と言ってもらうには、特許技術や先端技術が必要なわけじゃありません。他とは異なる尖った部分を磨き続けます。
そうして河合電器製作所の製品が、クライアントの品質に対する『願望』を実現することを世界中に伝えていきます」
株式会社河合電器製作所
企業名:株式会社河合電器製作所
業務内容:工業用ヒーターの開発、設計、製作、販売
住所:愛知県名古屋市天白区中平1-803
電話番号:0120-394-758
代表取締役:佐久 真一
創業:1929年
従業員数:135名
オフィシャルサイト:www.kawaidenki.co.jp
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