「国内最速の納期を、自負しています」。試作加工メーカー、株式会社仙北谷の代表取締役、仙北谷英貴氏は、自信を持ってこう宣言する。同社の武器は、ダイカスト用のアルミ合金「ADC12」の試作品を、これまで難しいとされた切削加工で仕上げる技術だ。CADデータを受領した2時間後には、加工機から切粉が出始め、他社が3週間で製作する製品を、わずか1週間で仕上げるスピード対応を誇っている。試作品によくある設計変更や図面の間違いを前提とした製作体制を整えており、たとえ変更が発生したとしても、顧客のダメージを最小に抑えつつ、高品質な製品を納期内に納めることができる。試作のスペシャリストとして世界の大手メーカーからの信頼も厚く、様々な業界で多くの受注実績を積み重ねている。

常識を覆す魅惑の素材 ボイドレスADC12

航空宇宙・自動車・医療・産業機器など、さまざまな分野で活躍する同社だが、最も得意とするのはADC12を素材としたアルミダイカスト(金型鋳造製品)の試作加工だ。現在、流通しているアルミダイカスト製量産品の大半はADC12を素材としている。非常にメジャーな素材だが、試作段階でこの素材を扱うには、ある難題が立ちはだかっていた。

アルミダイカストの試作は、鋳造ではなく切削加工で行うのが主流だが、ADC12には〝巣〟と呼ばれる空洞状欠陥が存在するため、切削には適さないとされてきた。このため通常、試作段階ではADC12ではなく、A5052などの圧延材が用いられている。しかし、両素材は組織構造が違うため、熱伝導率をはじめとした誤差を避けることができない。実際に、A5052を素材とした試作では問題がなくても、量産前のADC12による試験で不具合が生じることも少なくない。また、砂型鋳造や石膏鋳造でADC12を用いた試作をつくることも可能だが、ダイカストに比べて強度が半減するといった問題がある。また、設計変更が発生した際には、金型を一から作り直さなければならず、デメリットが目立つのが現状だ。

多くのダイカストメーカーはこの状況を改善すべく、ADC12の切削加工を渇望してきた。しかし、巣のないADC12は存在しないとされ、やむなく圧延材を採用してきた。顧客との対話からこの課題に注目した仙北谷は、素材メーカーとともに、巣のないADC12の開発に着手。常識を覆したともいえる、ボイドレス(無空洞)のADC12を開発に成功した。これによって、ADC12の削り出しが可能となり、量産品のダイカストと同じ材質で、ほぼ同等の強度を持つ試作品の加工ができるようになった。これまで、量産品と同材質、同強度の試作品を作るには、ダイカストの金型を起こすしか方法がなかったが、それではコストや納期に大きな影響を与えていた。例えば、ダイカストの金型を起すのに500万円のコストと3ヶ月の納期が必要されるケースにおいて、同社のADC12を用いれば、大幅なコストダウン(1個の場合、50万円以下での製作が可能となる為、なんと450万円以上がコストダウンされる)と、2週間の納期で試作品を作ることが可能となる。量産品を製造するダイカストでは、わずかなコストダウンが大きな差となって反映されるため、仙北谷のボイドレスADC12は、顧客に多くの利益をもたらす。さらに、同社ではこの素材を5tほど常備しているため、依頼を受け次第、即加工を行う手筈が整っている。このスピーディーな対応は、試作加工で重要とされる納期面においても、大きなアドバンテージとなっている。

巣が存在する可能性のあるアルミダイカスト品や鋳造品では、気密性を測るリークテストが行われる場合がある。同社にはボイドレスADC12を加工してきた10年余りの実績があるが、これまで一度も巣によるリーク漏れを起したことはないという。顧客からの絶大な信頼を集める同社のボイドレスADC12だが、ある大手研究所は「巣のないADC12は存在しない」というスタンスを崩さず、独自の試験を行った。ADC12に巣を発生させる原因は、素材に含まれた水素ガスなのだが、従来のアルミダイカストに比較して、同社製品には1/10から1/30しか水素ガスが含まれておらず、原理的に巣が発生しないということが証明された。また、CTスキャンやレントゲン検査においても巣は確認されておらず、大手研究所からも「巣のない」素材であることに太鼓判が押されている。

 

数々の取引実績とコンテストにおける受賞が裏付ける高い加工技術

類い稀なボイドレスADC12を保有していることは仙北谷の強みだが、ただ素材を持っているだけでは顧客の信頼を勝ち取ることはできない。同社のもう一つのストロングポイントは、アルミダイカストの試作に不可欠な技術を兼ね備えていることにある。

アルミダイカストはその名前が示す通り、鋳造の一体型製品であり、三次元形状をしている傾向がある。それゆえ、切削による試作加工には、高精度かつ複雑な加工技術が必要とされる。さらに、通常の金属加工は鉄材が主な削材であり、ほとんどの加工業者は柔らかく粘りのあるアルミ材を不得手としている。しかし、同社は80年代より数多くの人工衛星プロジェクトに参画しており、複雑形状やアルミ材加工のノウハウを積み重ねてきた。その技術はすでに熟練の域に達しており、世界最大の工作機メーカーDMG森精機が主催する切削加工ドリームコンテストにおいて、金賞を始めとした数々の賞を受賞。微細加工を含めた、難加工の技術の高さは折り紙付きだ。

これら受賞経歴や、前述のボイドレスADC12の試験結果は、耳目を集めるに値するものだが、同社代表取締役の仙北谷英貴氏は「私ども試作屋は、取引実績が全てです」と強調する。事実、国内の多様な業界の試作を手掛けており(トヨタ、日産、ホンダ等)、ドイツやアメリカを始めとした大手自動車部品メーカーからも、繰り返し受注し続けている。この実績こそが、試作屋としての仙北谷の優秀さを、何よりも表している。

株式会社 仙北谷

業務内容:機械加工全般、精密機械加工、マシニング加工、放電加工、 治工具・装置の設計製作、金型の設計製作、試作プレス

代表取締役:仙北谷英貴

創業:1962年12月15日

従業員数:30名

住所:〒245-0065 横浜市戸塚区東俣野町41

TEL:045-851-2480

WEB:http://www.senbokuya.co.jp/index.html