動力伝達用Ｖプーリー及び機械装置部品の設計・製造・加工・販売

自社ブランドとともに成長

自社ブランドであるVプーリーは1951年に製造を始めた。1973年には外径や溝の形状、寸法などさまざまなバリエーションをそろえ、「錦正工業Vプーリー」として標準規格化した。常時500種類以上をカタログラインナップし、代理店を通して日本全国、海外にも販売されている。40年以上のロングセラー製品だ。

規格品でありながら、顧客のニーズに合わせてカスタマイズするなどきめ細かなサービスを心掛けており、永森久之代表取締役社長（39歳）は「いい意味でわがままなユーザーの声にフレキシブルに応えてきた経験は、現在のOEM製品にも生かされている」という。

鋳造から機械加工、アセンブリまで一貫生産の強み

同社は86年前、町の鉄工所として出発した。その後、国内大手メーカーから声がかかり農機具エンジンプーリーの製造を請け負うことになり、新たに鋳造部門を立ち上げた。当時は職人色が強く、鋳造は鋳物屋、加工は加工屋と専門工場にそれぞれ持ち込まなければならないのが当たり前の時代だった。鋳造から加工まで自社内で完結できる工場は珍しく、総合的な生産管理を行えることが最大の強みとなった。

最近では一貫生産制を敷く鋳造工場も増えてきたが、大手企業の下請けとして専用化してしまう例が多い。そんな中、同社は幅広いマシン構成と経験豊富な技術スタッフにより、小ロットからのユニット生産が可能な技術提案型の工場として独自の姿勢を貫いている。

「創業者である祖父はチャレンジ精神にあふれ、一途な性格。Vプーリーの代理店契約の際には、商品を持って自分の足で全国行脚したそうです。そんな祖父の代から築き上げた総合生産力は私たちにとって大きな武器。顧客メーカーでの製品開発からこちらも積極的にかかわり、最終製品に必要な機能について詳しくお話を聞きながら、加工性から組み立て効率まで考慮、最適化した鋳造品の形状を設計、提案し、高性能と低コストの両立を実現させています」（永森社長）。

生産ラインも自分たちの手で

自社製品を生み出す原動力となった独立心旺盛な経営スタイルは、現場にも表れている。

まず、鋳造部門にある総延長150mの鋳造ラインに並ぶ造型装置や砂型の反転装置、溶解した金属を空中運搬する搬送用モノレール。これら現場を流れる生産ラインは、従業員が「便利な道具は自分たちで作る」を合言葉に自社設計、施工したオリジナルのものだ。

さらに、加工部門では高精度なNC機械と自作加工機を組み合わせ、生産品目に合わせてマシンレイアウトを自在に変更できる仕組みを構築している。

鋳造と加工、両部門合わせて約3500㎡という広い工場内のいたるところに、技術者たちの知恵や工夫が詰め込まれている。

また、設計部門で使われるシミュレーションソフトも、豊富な自社データをもとに独自のカスタマイズが施され、長年の経験で培ったノウハウや、積極的に取り入れている新技術が常に現場に反映される仕組みができている。

「たえまなく変化し続けていくことが大事。変化した後は良い影響と悪い影響の両方が必ず出てくるが、悪い影響を改善していくことで成長につながる」と力を込める永森社長。同社の強みである“総合力”は今日も現場で磨かれ、進化し続けている。

研究開発で世界市場へ

自社製生産ラインで培ってきた設計力をもとに、近年は次期オリジナル製品の開発にも力を入れる。
●（社内か外部か）の若手デザイナーとともに芸術性の高い工業製品を新規開発しているほか、2013年から取り組んでいるのが、鋳造品の仕上げと形状寸法検査を自動で行う自律型ロボットの開発だ。

現在、特殊な三次元データ処理技術の研究開発とメカニカル設計を進めており、ソフトウェアハウスやロボットインテグレーターについては、日本国内だけでなく、海外企業との協業も検討しているという。製品化が実現すれば、現場の作業環境が大きく改善されるだけでなく、鋳造品の高精度化、高信頼性が叶う新製品として、世界のものづくりの現場で役立てられる。

「付加価値の少ない大量生産品ではなく、難易度が高くても高性能なユニット製品を。今後はパートナーシップを海外にも拡げ、鋳造プロセスの特性を最大限に生かした、挑戦的なものづくりに取り組んでいきたい」。
●業界の異端児、永森社長による「鋳物革命」は始まったばかりだ。