かつて超精密部品の製造といえば、機械加工が当然であり、高コストは避けられないものとされてきた。だが、金属粉末を射出して成形するメタルインジェクション法(MIM)の登場により、その常識は変わることとなった。MIMはアメリカで誕生し、その技術を採用した国内メーカーも多い。だがキャステムは自社独自のMIMを研究開発し、1991年に米国特許を取得。以来、金型から完成までの一貫体制で、多品種小ロットに対応。かつては考えられなかった超精密部品のコストダウンという、革命的とも言えるサービスを提供する。

粉を混ぜる、型に入れる、焼く、超精密部品が出来上がる 新時代到来

複雑形状であるほど大幅なコストダウンが可能なMIM

 メタルインジェクション法(MIM)は、金属粉を金型に射出することで超精密部品を成形するアメリカで誕生した技術だ。機械加工では、ステンレスやチタンは難切削の材用とされ特殊な技術が必要だが、MIMでは材料による差はなく、強度も変わらない。全切削から移行する場合は、部品の形状が複雑であるほど大幅なコストダウンが期待できることから、超精密部品製造において存在感を高めている。

 キャステムは金型から完成まで一貫体制をとる特性を活かし、金型費のコストダウンも実施。また柔軟な製造体制で多品種小ロットに対応。品質管理も徹底し、国内トップクラスの品質を誇る。

 同社がMIM開発に着手したのは1980年代後半。時代は機械製品の高機能化や小型化へと向かっており、部品のサイズや扱う材質にも変化が起きていた。アメリカで開発されたMIMを 採用する動きが日本国内でも起きていたが、その技術利用には莫大な費用がかかることから、同社は独自で研究開発する道を選択した。しかし研究するにも情報 は乏しく、資金不足から機材も他社へ赴いて借りながらという困難な状況だった。だが、失敗を繰り返しても開発メンバーは決して諦めなかった。研究を続け、 わずか一年という短期間で、独自技術の完成という結果を出してみせた。当時、その開発に加わっていた戸田拓夫氏(現・代表取締役社長)は「とにかく必死 で、今では考えられないスピード感でした。開発できた理由は、精密鋳造メーカーとしては珍しく、私自身も含めて、社内に化学系の人材が多くいたことが大き かったです」と振り返る。

 MIMで製造を行う各メーカーは、粉末を繋げる有機バインダ(樹脂)の配合を非公開としている。理由は、そこに成形品の質を左右する重要なノウハウが隠されているためだ。キャステムも自社独自のMIMに 基づき蓄積したノウハウがあり、薄肉製品や異形穴、さらに他社ではあまり手掛けないシャープなエッジが要求されるネジの製造を得意としている。現在は、胃 カメラや歯科診療用器具等、医療機器の精密部品を主に手がけているが、小型化や軽量化が求められるあらゆる業種への進出も視野に入れ、社長直轄の開発部を 設けるなど、さらなる技術開発を進めている。

 自社で企画開発したミニチュア工具セット(2013年発売開始)は、同社のMIMの技術力の高さを示すものだが、これはほんの一端に過ぎない。サイズが25mmである理由は、それが実際に手で使用できる限界値だからだ。技術的にはこの10分の1以下へのサイズダウンも可能であり「依頼があれば2mmの工具も製造しますよ」と戸田氏は笑顔で語る。

用途を見極め「無」を具現化する

 超精密部品向けのMIMのほか、大型部品やシンプルな形状に適したロストワックス鋳造も同社の主力技術である。個数や難易度により型費を大幅に抑えるシステムを開発し、用途を見極めた上で、顧客にとってのメリットを第一に考えた、きめ細やかな提案を行う。 

  多品種小ロットに対応する同社には、医療、航空、自動車、繊維など、あらゆる業種からオーダーが入る。取引する企業数は月に千数百社に上り、なかには海外 のハイブランドも含まれる。「これを話すと大抵の同業者は驚く」と戸田氏が挙げるのは、同社がひと月に製造する新規の金型生産数だ。他のメーカーが通常ひ と月に10型、多くて2030型と言われるなか、月70型もの金型を新たに製造。圧倒的な対応力を誇る。

 キャステムは、1970年 に戸田氏の父が起こした金型工場を持つ精密鋳造工場からスタートした。当時は設計図が無い場合もあり、顧客の要望や対物の形状などから、職人が創造力と技 術力によって、用途に適った金型をつくり出していた。現在同社では、設計図が生まれる前の開発段階から加わり、まだ形のないものを提案するサービスを提 供。形を変えながらも、創業時のものづくりから、多くのものを受け継いでいる。

日本ならではのきめ細やかなサービスを武器に

  かつて全てのメーカーが不可能と断わるほど困難な依頼が、同社に舞い込んだ。当然、高い不良率が続いたが、改良を重ねながら技術を磨き、最終的には、その 製品をドル箱に変えることに成功した。このように同社は他社とは逆の道を選択し、敢えて挑戦することで、利益を生みだしてきた。「誰も行かないような方向 に、商売の生きる道があると見ています」(戸田氏)そのキャステムが次なる挑戦の場に定めたのは、北米の医療機器マーケット。MIMの設備を備えた工場をコロンビアに建設することも決定し、2016年の稼働開始に向け準備を進めている。小ロット、一貫体制の丁寧なものづくりは、アメリカでも際立つ。日本ならではのきめ細やかなサービスを武器に、北米マーケットでの挑戦が始まる。

Castem Co., Ltd.

株式会社キャステム
業務内容
精密鋳造部品及びMIMの製造販売
本社
720-0004
広島県福山市御幸町大字中津原1808-1
代表取締役社長 戸田 拓夫
創業1970
従業員数 200人
オフィシャルサイト www.castem.co.jp