極小バネ

0.02mm~12.00mmの線径を使用した圧縮コイルスプリングの製作,工業用バネの製造

株式会社幸手スプリング  View Company Info
Material: tungsten Wire diameter: 14μ External diameter: 80μ

一見何も入っていないように見える透明のプラスチック製容器。目をこらしてみると、わずかに黒い点状になったものが見える。この黒い点が、世界最小クラスのばねで、そのサイズは線14μ、外径80μ。わずか1センチ四方になんと500個もが固まった状態であるという。
この肉眼では見えないほどの極小ばねを作ることができるのは現在、日本国内で大手数社に限られ、社員20人規模の幸手スプリングが技術開発に成功したのは極めて異例なことだ。
その敷地内には、簡易式の研究スペースが設けられており、ここに前人未到の最小記録に挑む若きエンジニアがいた。

 

まるでクモの糸?究極の最小ばねを目指して

極小ばねの材料となる高強度極細線(トスミクロン)材。線径14μでは金属というより繊維に近い。温度や湿度の急激な変化、息を吹きかける等、ほんのわずかな刺激でクセがついてしまう。顕微鏡をのぞきながらの手作業で、コイリングマシンにセットするだけでも一苦労だ。
まるでクモの糸を繰るような繊細な作業を1人黙々とこなしているのが、28歳の篠﨑健志(しのざき・けんじ)チーフ。現在、中国で仕事をする社長に代わって現場を取り仕切る29歳の菅井里輝(すがい・りき)専務取締役と、20代コンビの二人三脚で研究開発に臨む。
「通常サイズとは別世界。1ミクロンごとに新しい扉を開いている感じ」と2人。目標は、同社を含め数社が量産に成功している線径14μ、外径80μの世界最小クラスのさらに上。まだだれも到達していない究極の最小記録を目指し、線径10μ、外径50μの極小ばねの開発に挑戦している。

高性能・超短納期であらゆるニーズに対応

同社は1983年に創業。“高精度・短納期・超短納期”をモットーに、あらゆる顧客ニーズに対応することで実績を築いてきた。
自動車部品や橋脚材といった過酷な環境で活躍する大きなものから、パソコン、医療機器のような精密機器の一部まで、幅広い分野に押しばね、引きばね、トーションばねといった多種多様な製品を収めている。アウトドアメーカーと開発した、持ち運び式のばね状コーヒードリッパーなどのユニークなヒット商品も持つ。同社製品は、国内大手のコイリングマシンメーカー2社の機械にも採用され、同業社の中にも根強いファンを持つなど業界で一目置かれる存在だ。

その強みは加工範囲の広さ。線径14μ~12㎜、国内で数社しか扱えない高強度材やタングステン、チタンといった特殊鋼の加工が可能な上、難加工材だけでなく、素材と形状のバランスに一癖あるような製品にも強い。D/d(平均径÷線径)は4~20が最適とされるなか、同社は2.3~75と、難易度の高い、D/dの極端に大きい・小さい特殊形状のばねの製造も多くこなしてきた。

その幅広い製品加工を可能にしてきたのが技術力だ

「ばねを恋人と思え」。
職人気質の社長の教えを守り、材料の性質やくせを見極める。ばねの起点と終点で変わってくる金属バランスも緻密に計算しながら、一つ一つの工程を丁寧にこなしてゆく。特に重要なのがマシンにセットするツールと呼ばれる加工治具。これは材質に合わせて、職人が一から手作りする、昔ながらのやり方を守っている。例えば、篠崎チーフは設計図なし、やすり1本で10μ単位の削り出しができるというから驚きだ。
「家族経営の小さな工場ですが、創業後30年間、他社ができないような加工が難しい製品、厳しい納期にも対応してきました。顧客ニーズに合わせてフレキシブルに動ける等、小さい工場だからこそのメリットもあります。こうして培ったノウハウを新開発の極小ばねに生かしたい」(菅井専務)。

町工場と世界をつなぐミクロン技術

極小ばねに取り組むようになったきっかけは、数年前、医療業界でのニーズをつかんだこと。体内に導入される医療用カテーテルの柔軟な動きを可能にするため、極小ばねが必要とされていることを知ったのだ。ほかにも、携帯電話に代表される、あらゆる製品、電子部品の小型化、モバイル化、高性能化が進む中、極小ばねは将来を担う重要な技術となっていた。
ちょうど、2008年のリーマンショック後、菅井専務は将来を見据えた新たな展開を探っており、4年後、視察訪問したものづくりの国ドイツで、高い精度を追い求めて日々精進する職人の姿に共感、世界トップを目指す決心が固まった。
直後から準備を始め、ホームページを日本語、英語、中国語の3か国表示にリニューアル。国の技術開発支援事業にも採択され、専用のコイリングマシンを導入。本格的な研究開発をスタートさせた。そして、わずか2年あまりで、世界トップクラスの線径⒕μ、外径80μを達成。ブラジルのドイツ系企業との海外取引も始まった。今後は、さらなる高みを目指し、技術開発を進めていくとともに、本格的な販路開拓にも力を入れていく考え。
「ばねは機械の内部に組み込まれることが多く、外からはなかなか成果が見えづらいもの。ギネス記録も意識していますが、製品なので使ってもらってこそ。世界トップの製品を作り、世界中の人々に役立てられる喜びを、現場の職人と分かち合いたい。自分がその橋渡し役になれればうれしい」。菅井専務は小さなばねにグローバルな夢を託す。

株式会社幸手スプリング

■本社
会社名:株式会社幸手スプリング
代表者:代表取締役 菅井利幸
設 立:1983年4月
資本金:1000万円
規 格:ISO9001認証
所在地:〒306-0214 茨城県古河市高野740
連絡先:TEL 0280-92-2665/FAX 0280-92-3454
HP  http://satte-spring.com/
Mail s-spring@trust.ocn.ne.jp

■海外拠点
会社名:幸手精密五金(昆山)有限公司
設 立:2013年12月
資本金:25万米ドル
所在地:中国江蘇省昆山市千灯鎮秦峰路451号(千灯原創型工業園大唐4号―2)
連絡先:TEL 86-512-5033-2440 /FAX86-512-5033-2441
株式会社幸手スプリング様へお問い合わせをご希望される企業の方は、直接上記の連絡先までご連絡をお願い致します。お問い合わせの際はインデックスライツのポータルサイトをご覧になられたとお伝えください。