外骨格ロボット「スケルトニクス」

スケルトニクス株式会社  View Company Info

2015年2月、ドバイで開かれた政府サミットの特別展示場に、人々の注目を一身に浴びるロボット〝スケルトニクス〟が現れた。この搭乗型の外骨格ロボットを開発したのは、2人の若き技術者が経営するスケルトニクス株式会社である。同社の名が冠されたこのロボットは全長が約3m。搭乗者の四肢の動きを正確にトーレスし、歩いたり腕を動かしたりという人体の動きをダイレクトに拡大させることが可能な世界初の搭乗型のロボットだ。産業用装置のリーディングメーカーなどが出展していた会場には、抜群の知名度を誇る二足歩行型など、多彩なロボットが並んでいたのだが、スケルトニクスのダイナミックで精密な動きは人々とメディアの話題をさらい、機体はそのまま購入されてドバイの首相オフィスに展示されたという。

エンターテイメント業界をリードするアイデア

Skeltonics

最新モデル

現在、ロボットの種類は多岐に渡るが、一つの形態として外骨格という分野が存在する。アニメや映画に登場するロボットスーツを思い浮かべていただければ、そのイメージがわかるのではないだろうか。本来、外骨格とは昆虫のように体の外側に骨格をもつ構造のことをさしているのだが、同タイプのロボットも人体の外側に機器を装着するため、外骨格型と呼称されているのだ。スケルトニクスもこのカテゴリーに属しており、その動作はリンク機構によってもたらされている。モーターが発明される以前に発達したこのシステムは、リンクと呼ばれる軸と軸が繋がれ、接合部を関節のように動かす技術のことをさす。リンク機構は日常生活においても頻繁に使われており、車のワイパーなどにも採用されている。ワイパーの場合、根元に設置されたモーターによって動き出すものの、その動きにあわせて接合部が一定の動作を行うようにリンクが組まれており、二つの軸が姿勢を変えながら雨をはじくように設計されているのだ。

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第5世代

通常、ロボットはモーターなどの動力が使用されるのだが、スケルトニクスは全ての動きをリンク機構によって実現させている点が最大の特徴だ。このアイデアを生み出した同社CTO阿嘉倫大氏は、「人間が乗って運転することができるロボットを作る上では、リンク機構によって人体の動きを拡張し、操縦することが最適な答えだった」と語る。強い力を生み出すためにモーターを導入してしまうと、その重量を支えるため、パーツの肥大化を避けることができない。そこで、ロボットを操縦するという目的から逆算されたのが、リンク機構による無動力というスタイルだったのだ。スケルトニクスの腕にはそれぞれ複数のリンクが組まれており、搭乗者の腕の動きはダイレクトにロボットの腕部に伝わるように設計されている。つまり、自分の体を動かすように、拡張されたロボットの四肢を操縦することが可能なのだ。歴史をひも解いてみても、人類は西洋竹馬などを考案し、人体の拡張を目指してきた。しかし、それは末端の節の長さを延長しているだけであり、体全体の動作拡大には至らずにいた。そこで同社では、ロボット業界ではロストテクノロジーとされるリンク機構の利点を最大限に生かすことで、世界で初めて理想的な人体の動作拡張を実現させたのだ。

現在、スケルトニクスが活躍しているのは、エンターテイメントの分野だ。TV番組での演出やコマーシャルへの協力のほか、ドバイを始めとした国内外のイベント会場に出向き、人々が体験したことのないような驚きを提供している。さらに、イベントへの出張業務だけではなく、長期的なパフォーマンスを必要とする遊園施設などに向けては販売も行っており、すでに長崎のテーマパークのショーに導入されたという。

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第4世代

なぜ、スケルトニクスが多くのメディアから注目され、エンターテイメント業界で重宝されているのか。その理由は、同社製品の扱いやすさとトラブルの少なさにある。前述の通り、外骨格の主流は、モーターなどが組み込まれた強化型タイプだ。しかし、電気などの動力を使用した場合、トラブル時における故障部位の発見、つまりデバック作業が必要となる。さらに、電気系統の修理には、回路などの知識が必須だ。その点、スケルトニクスはリンク機構というメカニック要素だけで構成されているため、デバックや修理が容易だという強みがある。例えば、ネジが壊れてしまったために腕が動かなくなったとしても、すぐに故障の原因を視認することができ、修理も迅速にできるのだ。事実、これまで同社のスケルトニクスはトラブルが報告されておらず、その信頼性は非常に高い。さらに、第1世代から第5世代に至る開発過程では、様々な改良が加えられている。搭乗可能時間だけを見たとしても、初期の5分から70分と飛躍的に上昇しており、よりエンタメ分野での特性が追求されているのだ。

上記のように壊れにくく扱いやすいというストロングポイントが、レンタル事業や購買の決め手となっている。さらに、人々を夢中にさせるスケルトニクスのデザイン性や動作は評判を集め、米国のABCテレビに取り上げられるなど、エンターテイメント業界で革新を起す存在となっている。

 

未来へと繋がる若き技術者の挑戦

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第3世代

スケルトニクスのルーツは7年前に遡る。当時、国立沖縄工業高等専門学校に通っていた二人は、ロボット部に在籍。様々なロボットを製作しては、コンテストに出場していた。なかでも契機となったのは、2008年の第21回高専ロボットコンテストだ。同大会では歩行をテーマとしてルールが設けられていたのだが、同社の2人はリンク機構を採用したロボットを製作し、念願の初優勝を果たした。この時点でロボット部での製作は終えたのだが、その後2年間のブランクを経て、リンク機構をベースとした搭乗型ロボットを作るため、チームを再結成する。2011年には、世界で初めて人体の動作を拡大する搭乗型外骨格スケルトニクスの開発に成功。グットデザイン賞を始めとした様々な賞を受けながら、改良を重ねてきた。しかし、それは全て、現在開発中の新シリーズ〝エグゾネクス〟へのステップに他ならない。

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第2世代

エグゾネクスは、スケルトニクスと同じく外骨格に部類される搭乗型ロボットであるが、その特徴は大きく異なる。新型機は、スケルトニクスで省かれたモーターなどの動力を搭載しており、これまで苦手としていた重い物を持つという動作を可能としたものになる。さらに、移動時には人型から車両型へと変形するという驚くべき機能を備えている。まさにアニメや映画から飛び出してきたようなアイデアの可変型ロボットだが、その利点は現実的な面にも及ぶ。モーターなどが装着されたロボットは重量が重いため、移動にコストや手間がかかってしまう。しかし、機体自体が変形し、フレシキブルな移動を可能とさせるエグゾネクスは、より制限を受けずに、運用をすることが可能だ。多くの機能は未だベールに包まれたままであるが、来春までの発表を予定している同社CEOの白久レイエス樹氏はこう語る。

「もともと、私たちがロボットを開発しはじめたのは、『自分が乗ってみたい』という単純な欲求からスタートしています。エグゾネクスは、ダートバイクなどのエンタメ分野で使用することは視野に入れておりますが、このロボットの帰着点がどこになるのかは、私たちにもまだ見えておりません。弊社の持つ技術と知識を全て詰め込み、過去に類を見ないハイスペックなロボットが完成したときに、初めて新たな世界が見えてくるのではないかと考えています。

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第1世代

過去の学生時代ではコンテストのルールに基づいたロボットをつくり、現在は自分たちの欲求に従ってロボットの開発を行っています。エグゾネクスが完成した暁には、社会に役立つものづくりを志すかもしれませんし、まったく新しい世界へと進むかもしれません。しかし、弊社の根底に流れる『ものづくりが好きだ』という気持ちがある限り、私たちはなにかを作り続けて行くのだと思います」

これまで人類は、科学者や技術者たちの純粋な欲求に支えられて発展してきた。同様に、同社のベースにあるものも、「ただ、良い物を作りたい」という飽くなき探究心と向上心だ。その技術と才能が、今後どこへ向かって進んで行くのか。そして、私たちにどのような未来を見せてくれるのか。この若き2人の技術者から、目を話すことができない。

スケルトニクス株式会社

スケルトニクス株式会社
業務内容:ロボット開発
本社住所:〒192-0154 東京都八王子市下恩方町1100−16
電話番号:050-3486-9802
代表取締役:白久レイエス樹
設立:201310
従業員数:2
オフィシャルサイト:http://skeletonics.com