商品設計開発、試作サポート

求められているのは、「世の中にない形」

『顧客が求めているのは、「世の中にない形」です。しかし、「これを作りたい、こうしてみたい」というアイデアがあっても、短期間で開発することは無理だとあきらめているケースが多くあります。こうしたアイデアを、スピーディーに現物やデータにして提供できれば、これほど素晴らしいことはないと思います』。できないと思っていたことを一つ一つ形にすることで、また新しいアイデアや課題が生まれ、最終的に優れた製品の開発につながっていく、これが同社の社長•橋爪良博（Hashizume Yoshihiro）の思想だ。『顧客が求めていることを「一緒にやってみましょう」と言える会社でありたい』、橋爪は常にそう考えている。

このアイデアを実現するのが3Dプリンターだ。いま注目されている3Dプリンターだが、橋爪は2010年の社長就任後、すぐに導入に踏み切っていた。スワニーでは、社内の技術者がいつでも自由に3Dプリンターを使えるようになっており、クリエイティビティを高める環境を整えている。

Stratasysとの出会いによって実現した世界最新技術

スワニーは2011年にStratasys社製の3Dプリンター「Objet260 Connex」を導入し、形状・機能確認用の試作品だけでなく、射出成形用の型の造形にも同3Dプリンターを活用している。
導入したObjet260 Connexは、硬質、透明、ゴムライク、耐熱などさまざまなタイプの樹脂材料が利用できるので、多様な形状・機能確認を伴う同社の業務ニーズに適していたという。表面形状の滑らかさ、造形時間の短さも評価したポイントだ。「どんどん失敗できる環境を作っておくことで設計者は冒険するようになり、そこからいいアイデアが生まれてくる」（同社代表取締役社長の橋爪良博氏）という利点もあった。若い設計者は経験が少ないので冒険するのを怖がるが、3D プリンターでの造形なら「いくら失敗しても構わない」（同氏）。

さらに、同社における3Dプリンターの活用で特徴的なのが、金属製のモールドベース（金型）と3Dプリンターで造形した樹脂製の入れ子（樹脂型）を組み合わせた「デジタルモールド」である。樹脂型の材料はABS（アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン） 樹脂で、デジタルモールドは製品と同じ樹脂（アクリル樹脂などの）を射出成形し、評価するための部品を少量生産するのに用いる。

例えば、自動車のライトなどに組み込まれる光拡散用フィルターの評価でデジタルモールドを活用した。光拡散用フィルターは、拡散の効率によってLEDランプの数を半減させることもできるので、試作が欠かせない。屈折率や光の投射を調べる解析ツールもあるが、最終的にものをいうのは製品と同じ樹脂で作った試作品だという。デジタルモールドを活用すれば早い段階で試作品による評価を実施できる上、量産用の金型の修正コストを大幅に削減できる。

単純形状の製品ならばデジタルモールドで50～100ショットほどの小ロット生産をすることも可能だが、1000個単位で成形するようなときは金型が欠かせない。成形品を見ながら金型を何度も修正して完成に近づけていくため、修正回数が増えれば予算がかさみ納期が長引く。しかし、3Dプリンター製の樹脂型で事前に評価できれば、その結果を量産用の金型に反映させることができ、修正のコストと工数を大幅に削減できる。「金型の一部の形状を検討したいのでデジタルモールドで試してみる、というのが正しいアプローチ」（同氏）。

ただし、デジタルモールドは樹脂型を金型に嵌め込むだけで済むという単純な話ではない。成形の際、温度や圧力を微妙に加減しなければならず、それを誤れば型は壊れる。つまり、そこには金型職人の熟練の技が不可欠だった。最新の技術と長年の職人技が融合した相乗効果で実現した技術と言えそうだ。