世界中の食器ブランドにOEMを提供 創業100年の磁器カップ&ソーサーメーカー

株式会社丸朝製陶所  View Company Info

丸朝製陶所は、日本の陶磁器生産の約半数を誇る一大産地、東美濃地域で創業100年を超えるカップ&ソーサーのトップメーカーだ。全ての磁器を1300℃以上の高温で22時間焼成する製法により、耐久性に優れ、日本ならではの薄さとデザイン性も兼ね備えたプロダクトをOEMで製造する。クライアントには日本、北米、アジアの大手食器メーカーが名を連ね、これまで2億5000万個以上を世界各地に納品してきた実績を持つ。

ほとんどの日本人がコーヒーを注ぐ白いカップ

 

日本列島の中心に位置する広大な濃尾平野。あの世界企業TOYOTAも本社と工場を構える、文字通り日本の製造業の集積拠点である。そこから東へ一山超えた場所にある岐阜県の東美濃地域は、陶磁器産地としての歴史が長く、16世紀頃から盛んに生産が行われてきた。

丸朝製陶所は、そんな東美濃地域で100年に渡って磁器を焼き続けてきた、知る人ぞ知る老舗メーカーだ。日本、アジア、そして北米などの大手食器メーカー向けのOEM製品を中心に、これまでなんと2億5000万個以上の磁器を造形し、出荷してきた。

丸朝が特化して製造するのは、多種多様な磁器製品の中でも、特にカップとソーサーだ。ほとんどの日本人は、そのメーカーを知る知らないに関わらず、人生のある瞬間にカフェや自宅で丸朝が焼いた白いカップに熱々のコーヒー注ぎ、飲み干した経験があると言っても過言ではない。それもそのはず、日本の有名食器メーカーや、全国展開する大手カフェチェーンのコーヒーカップ、あの世界的なテーマパークでお土産として売られているマグカップまで、実は丸朝の工場で作られているからだ。それだけではない、丸朝は輸出メーカーとして50年以上の間、北米の大手食器メーカーやキッチンウェアブランドの製品をOEMで造り続けてきた。

 

すべての磁器を1300℃で還元焼成 耐久製と薄さを兼ね備えたプロダクト

丸朝はこれまで世界中のテーブルにカップ&ソーサーを届けてきた。なぜ100年という長期に渡って、丸朝は顧客から信頼され続けているのだろうか。丸朝が焼く磁器の耐久性にその秘密がある。

磁器を焼く際、窯の温度は1270℃前後まで上げるのが一般的だ。釜の内部をこの温度まで上げると、通常は日本や世界各国の磁器製品の工業規格を満たす耐久性と、耐熱・急冷試験をクリアすることができる。しかし丸朝の工場では、ここからさらに30℃以上上げた1300℃以上で全ての磁器を焼成することにこだわる。たった30℃の違いだが、実は大きな差が生じるのだ。さらに還元焼成という方法を用い、窯の中の酸素を除去することによって土の純度と密度を高め、22時間かけてじっくりと焼成する。これらの方法により、非常に高い耐久性を持ったカップ&ソーサーが焼き上がる。還元焼成により、吸水性のない高耐久の商品となる。また全商品を素焼きすることにより、磁器の表面も滑らかな美しい仕上がりとなる。

磁器は1℃の温度変化でも土の収縮率に大きな違いが出てくるため、焼成には膨大なノウハウの蓄積が必要となる。代表取締役の松原圭士朗が、企業秘密となる温度変化と収縮率のサンプルをそっと見せてくれた。直径2cmほどの白い円形のサンプルは、確かに、温度変化によって焼成後の縮み方が異なっている。「うちは100年という歴史の中でノウハウを積み重ねてきました。窯の温度をどういうスピードで変化させていくかを表す曲線のグラフ、『ヒートカーブ』にも企業秘密があるのです。磁器を素焼きした後にかける釉薬も、当然、温度別に調合する必要があります」。

丸朝製品の特徴はこれだけではない。4mmほどが一般的なカップの厚みを、耐久性を備えたまま最小1.5mmまで薄くし、「大量生産」できることにある。磁器は薄くすればするほど成型が難しくなる。一つ一つのカップにゆっくりと時間をかけ、手作りであればそれも可能だろう。しかし丸朝は大手企業のOEMとして数千個単位で同じ規格のカップを製造するメーカーだ。機械のセッティング、型の精度、土の質など、大量生産のための品質管理は想像以上に難しい。同社工場では、そのデータが創業当時から職人によって引き継がれてきた。そうして高い品質の製品を作り続けることにより、丸朝は世界中から信頼を得てきたのだ。

職人の技術が蓄積された生産工程
世界各国の品質基準もクリア

丸朝は、土にアルミナを20~30%ほど混ぜた強化磁器の分野でも力を発揮する。非常に割れにくい強化磁器は、米国の有名キッチンウェアメーカー向けに100万個以上納品されてきた。

そして、忘れてはならないのが、丸朝製品の日本らしいデザイン性だ。カップは約300種、ソーサーは1000種以上の型を持ち、顧客が必要とする製品の形を提案する。もちろん、まったく自由な新しい型の開発も可能だ。発色の再現力も丸朝の強みとなる。一般的に磁器の発色は高温ほど薄くなってしまうが、釉薬の調合によって、1300℃の高温でも顧客の好みに応じた発色を担保し、色のサンプルも豊富に用意する。

丸朝の本社工場を訪れると、フリーカーブと呼ばれるゴンドラが工場内の宙を移動し、製造過程のカップを乾燥させながら運ぶちょっと不思議な光景を見ることができる。各ブースでは、熟練の職人が手作業と機械によってそれぞれの工程にあたっている。練り上げられた土はオペレーターによって小さく切り分けられ、高速回転する機械ろくろによって成型される。乾燥、手作業によるハンドル付けを経たカップは、トンネル窯という細長い窯で一旦素焼き。素焼きが冷めると釉薬をかけて、内部が宇宙航空産業でも使用されるセラミックファイバーで覆われて断熱効果が非常に高い「ファイバーシャトルキルン」で、22時間に渡って本焼きされて完成となる。さらにブランド名やイラストをデザインする場合は、シルクスクリーンによる転写紙を貼って、もう一度800℃で焼き付けたら完成だ。

丸朝製品は各国の磁器の品質基準も満たしている。例えば、カリフォルニアの溶出検査基準であるPROPOSITO65にも対応。世界中に製品を輸出した経験があるため、各国へのスピーディーな納品が可能なのも丸朝の魅力だ。

丸朝は近年、OEMだけでなく自社ブランドの製品開発にも力を入れている。ニュージーランドのブランドとコラボし、パステルカラーで薄手のカップを制作。徐々に自社ブランドの人気も広げている。ぜひ一度、丸朝のカップにコーヒーを注ぎ、ゆっくりと味わってもらいたい。丸朝を使い込むほどに、その上質さと日本の製陶業の歴史の重みが伝わってくることだろう。

株式会社丸朝製陶所

【企業名】株式会社丸朝製陶所
【業務内容】磁器カップ&ソーサーの製造
【本社住所】岐阜県多治見市星ヶ丘3-8
【代表取締役】松原圭士郎
【創業】1916年
【従業員数】21名
【電話番号】0572-22-8287
【WEB】http://www.maruasa.jp/