待望の日米巨大ロボット対決、ついに実現
二人のアメリカ人が目指す新たなエンターテインメント

アメリカからの挑戦状

自分がパイロットとなって、巨大ロボを操縦する…

日本のロボットアニメ文化の中で育ち、一度はそんな夢を見た者もいるだろう。それは海の向こうでも同じだった。

2015年6月、二人のアメリカ人男性によってある動画が公開された。

星条旗を羽織り、アビエイター型のサングラスを身につけた二人が、「星条旗よ永遠なれ」の音楽に乗せ作業場を練り歩く。そこで彼らが開発したのは、実際に人間が搭乗し操作できる、重さ5.4トンの巨大なロボットである。ペンキ砲を時速160キロで飛ばせる「銃」もついているという、まさに夢の戦闘マシーンだ。

しかし彼らに先駆け、巨大ロボットを製作していた者たちが日本の山梨にいたという。これこそ世界初の搭乗型巨大ロボットになる「クラタス」を製作した、水道橋重工だ。「水道橋、お前たちには巨大ロボットがある。俺たちにも巨大ロボットがある。次に何が必要か分かるだろ?俺たちは『決闘』を申し込む。」どちらがより強いか戦わせようじゃないかという「挑戦状」である。「ガンダム」シリーズや「マジンガーZ」など数々のロボットアニメで世界中を魅了してきた日本と、エンターテインメント大国であるアメリカの威信を懸けた戦い。この動画は再生回数700万回を超え、大きな話題となった。

それから約1年半、ファン待望の世紀の対決がついに実現する。この動画に登場する二人、メガボッツ創業者のギー・カヴァルカンティ氏とマット・オーレイン氏が、巨大ロボットと決闘への想いを語る。

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メックウォリアーに憧れて

ギー「中学生のときに私は「バトルテック」や、日本のアニメがオリジナルの「ロボテック」のウォーシミュレーションゲームをプレイするようになりました。それはもともとボードゲームだったのですが、のちに今回のアイデアの源泉となったビデオゲームの一種である、テーブルトークRPGの「メックウォリアー」へと変化したものです。そうして私はだんだんとサイエンスフィクションの世界が好きになっていったのです。

 

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高校に入ると私は「ファーストロボティックス」というチームに所属し、毎年大会へ向けロボット製作をスタートします。高校時代には4体作りました。その後、工業学校へ進み、ロボット工学やエンジニアリングを学びました。専門は機械工学です。そして巨大ロボットを製作している企業の「ボストン・ダイナミクス」へ入社します。有名な四足歩行ロボットの「ビッグドッグ」は私も開発に関わったロボットです。その頃、自分自身のショップ運営も始めました。スポーツジムのような会員制をとっていて登録すれば自由にそのショップを利用できるというシステムです。

 

巨大ロボット「メガボッツ」製作のアイデアはその頃に生まれました。」

ボードゲームが始まりだとのことだが、ロボットアニメには影響は受けなかったのだろうか?

ギー「ボードゲームがきっかけなのは間違いないのですが、その後、「ガンダム」や「パワーレンジャー」といったテレビ番組を観るようになりましたね。とても好きでしたよ。

それに、私たちの製作するロボットのコンセプトは、ウォーシミュレーションRPG「メックウォリアー」に登場するロボットの影響を受けています。」

 

megabots08一方マットは、「ちょっとしたビデオゲームオタクだった」といい、「ゲーム機といえば、スーパーニンテンドーしかなかった」。高校時代からコンピューターを自作しており、コンピューター工学に興味があったものの、大学では電気工学を専攻した。

マット「子供の頃は、モーターなどのパーツを組み立てて遊ぶレゴが好きでした。車とか輪ゴム銃をよく作りましたね。大学では、制御装置のプログラム方法を学び、モーターやライトを使った小さなものや実際に走らせることのできる小さな車を作りました。制御システムのクラスを取って、システムに知能を与える方法も学びました。それからある研究開発所でインターンとして働いた後、デトロイトに移り、製作所を開きました。」

 

megabots01 二人はギーが働いていたボストン・ダイナミクス社で知り合う。

ギー「彼がボストン・ダイナミクスへインタビューをしにやって来たことがあったのですが、そのとき一緒に夕食に出かけたのです。話をしてみたら私は機械工学が、マットは電気工学や機械統制技術が専門分野だとわかりました。そのとき、お互いの知識を掛け合わせれば一緒に面白いことができると思ったのです。」

 

マット「私はロボットの製作よりも会社を始めることに興味がありました。ギーと出会って、私たちは互いを補い合えるスキルを持っていることに気付いたんです。二人でチームを組めば、クールなものが作れると思いました。そこで思い付いたのが巨大ロボットの製作です。ロボットを製作して収入を得る方法やロボットのデザインについて考えました。」

 

巨大ロボットを作りたいとかねてより考えていたギーと、会社を作ることに興味があったマット。二人は意気投合し、メガボッツ社を立ち上げることになった。

創業以降、良いチームワークを保って仕事を進めている。初代マーク1の制作は電気系統をマットが、工学系統や設計部分は二人で担当した。

ギー「マットは才能があって、ロボット製作だけでなくビジネス面においてもうまくお互いを補完し合えているので、良いパートナーだと思います。得意とする分野がうまく分かれているのです。」

マット「ユーモアも共感できることが多くて、関係は順調です。とてもいいタッグだと思いますよ。ギーは常に先を見据えた視点を持っているので、アイデアを出してくれます。一方、私は運営やアイデアを実行する側です。人材雇用とか、どの動画配信プラットフォームを利用するかなどを考えます。技術面だけでなく、ビジネス面でも、お互いに利益のある関係なんです。」

 

megabots05会社設立の後、投資家からの資金を募った。スポンサーが付いてからマーク2の制作に取り掛かり、5ヶ月で完成させた。

ギー「 マーク2は2015年始めに製作を開始して5月には完成させました。完成のひと月半前から1日18時間、週末無しで製作に時間を費やしました。毎朝7時には起きて仕事に出かけ、毎晩家に戻るのは深夜で、1時には気を失うように寝るという毎日でしたね。」 マーク2完成後、水道橋重工への決闘へのオファーを決めた。

 

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ギー「ある日、巨大サイズのロボットが完成したらそれで何をしようか?という話になったのですがその時に“1対1でのロボット同士の戦いが見たい”という話が出たわけです。そうなると1体では足りなくなってきますよね。そこでもう1体製作しようとなったのですが、自分たちが作ったロボット同士を戦わせるのはストーリーがなくてつまらないと思いませんか? それであるとき調べると、他にも素晴らしいロボットが存在することが分かりました。

ロボットが2体存在するのです。それなら戦うべきでしょう? それがこれまでの経緯です。」

 

そんなメガボッツから決闘を申し込まれた水道橋重工。「クラタス」は、鍛冶師であり造形作家の倉田光吾郎氏が2012年に完成させた。高さ約4メートル、重さ約4トン、BB弾を発射する「ツインガトリングガン」などの武器も装備。一度狙った獲物は逃さない自動照準機能までついている。そしてクラタスの量産化というプロジェクトのもと立ち上がったのが水道橋重工だ。

なんとこのクラタス、アマゾンで販売もされている。価格は1億2千万円。購入した人がいるかは不明だが、その取り組みは国内外のロボットアニメファンをエキサイトさせている。

メガボッツによって「挑戦状」の動画が公開された数日後、水道橋重工も動画を公開した。映像の中で倉田氏は、クラタスの動力の要である「油圧」と書かれた日の丸を羽織り、「もうちょっとカッコよく作れよ」「デカいものに銃つけりゃいいっていうアメリカ文化。アメリカ丸出し」「日本文化じゃないですか、巨大ロボットって。海外にとられたくない」とメガボッツを挑発し、「やりますよ、僕は。絶対」と自信満々。取っ組み合って殴り合う「格闘戦」という条件を付け、挑戦を受けて立つメッセージを送った。

 

メガボッツ側は、揃ってクラタスと水道橋重工を絶賛している。

ギーはクラタスを初めて知った時のことを「まるで夢のようだと思った。とても感激した」と回想する。

ギー「面白いことに、私とマットは2人とも”相手のロボットのほうがかわいい“とさえ思っています。より完成されていてより美しいとね。「クラタス」の見た目の良さに嫉妬さえ覚えています。」

マット「彼らが生み出すロボットは大好きですね。目を見張るようなデザインで、ロボットの細部にまでこだわりがあって惚れ惚れします。純粋に美しいロボットですね。また、企業を宣伝する演出も非常に洗練されています。ホームページは見事ですね。巨大ロボットを作りたいと思う人たちは誰もが素晴らしいと思います。水道橋重工の方々は巨大ロボットに憧れる人たちの夢を形にしているわけです。ホームページでも巨大なメカスーツなどを生産していると紹介していますよね。そんなところが本当に好きです。また、巨大ロボットとエンタテインメント企業を中心にしたビジネスモデルを確立させるアプローチが私たちメガボッツとは異なることも興味深いです。」

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クラタスに負けじと、メガボッツは決闘に備えた新たに「マーク3」を開発した。

ギー「新型のメガボッツマーク3は2より見た目も良く、より精密で、2000以上の配線が走るほどの複雑さを備えていて、高さ16フィート(約5メートル)、幅15フィートもの巨大ロボットです。重量もマーク2と比べて増え、350馬力のパワーを誇るエンジンが搭載されています。」

未来的なデザインのクラタスに対し、マットは「美しいロボットを作ろうとは考えていません。もっとモンスターに近いロボットを考えています。そうなると、錆びついて汚れていて、重装備なロボットになりますね」。一見古びたように見える塗装も、敢えてデザインされたものだ。来る決闘に備え作戦進行中とのことで、期待は高まる。

 

目指すは次なるウォルト・ディズニー

二人の企みは、今回の決闘のさらに向こうを見据えている。クラタスに決闘を申し込んだのは、その後の壮大な計画の布石とするためだ。

かねてよりビジネスに興味があったマットは、「お金の収支を考えて株主を喜ばせるだけではなく、世間一般の人々にとって意義のあるビジネスやブランドを生み出したい」と語る。

マット「私が目指すのは次なるウォルト・ディズニーになることです。エンターテインメントに影響を与え、変化さるような存在になりたいのです。ただ一体の巨大ロボットを作るということに留まらず、人々に驚きを与え、何が実現可能なのかという彼らの認識を変える機会を作りたいと思っています。」

ロボットを使ってエンターテインメントに革命をもたらし、それを見た子供たちが科学者やエンジニアを目指すきっかけを作りたい。それがマットの願いだ。

マット「巨大ロボットは本当にクールだと思います。でも私が魅力を感じたのは、巨大ロボットの製作そのものではなく、製作を通じて世界に大きな影響を与えることができるという点にありました。」

 

エンターテインメントに新風をもたらす、ロボットリーグ構想

 

そのために二人が目指すのは、巨大ロボットがさらに進化するであろう近い将来、ロボット同士を戦わせて観戦できる「スポーツリーグ」の立ち上げだ。

マット「クラタスに決闘を申し込んだのは巨大ロボット対戦のスポーツリーグの立ち上げが目的です。実際、2体の巨大ロボットが対決する大会とはどのようなものなのか世間に認知してもらう必要があります。クラタスは決闘を申し込むのにふさわしい巨大ロボットだという考えがずっと頭から離れませんでした。私たちだけでロボットを開発して戦わせるというのではなく、敵を用意すれば注目が集まり、応援したいという人たちまで出てきます。そうなれば、このスポーツリーグがどのようなものになるのか、より具体的に伝えられます。

スポーツリーグに関して動画を作れば、それもまた1つの宣伝になるでしょう。もっと見たいと思う人が出てくるかもしれません。頭の中のイメージを口頭で伝えることは難しいものです。それよりも、実際に見てもらった方が明確に理解してもらえます。」

 

クラウドファンディングでロボットをパワーアップさせるための資金を集めた。決闘が決まる前のマーク2制作時にもクラウドファンディングは行っていたが、注目度は低く、「実現できるわけがない」という意見も多かった。しかし、マーク3での「日本の巨大ロボと戦う」という名目だと、次から次へと支援が集まったのだ。

 

「描いた夢を実現しようと行動する人たちの心を奮い立たせる」

 

マットは「私たちメガボッツはライブ・エンタテインメントの革新、SFの世界を現実に再現することを目指した企業です」と力を込める。

マット「巨大ロボットはまさにそのスタート地点。私が夢中になって取り組んだものが、文化や歴史に有意義な形で影響を与え、描いた夢を実現しようと行動する人たちの心を奮い立たせるでしょう。その人たちの中には科学者もいるかもしれません。そうなれば、素晴らしいですね。私たちは世界中の人々を鼓舞するきっかけになり、世界を変えていきます。」

 

最後に、日本のファンへメッセージを。

ギー「まず、対決がすぐに実現するわけではないことをお詫びしたいと思います。それと、ファンの皆さんはサイエンスフィクションの現実化に対して様々な期待を抱いていると思いますが、その期待に応えられるような最高のショーをお見せしたいと思っています。それに向けて最高のロボットを作りたいですね。日本で生まれた巨大ロボットがアメリカを魅了し発展を遂げ、その結果として私たちは巨大ロボットを製作しています。そのロボットが近い将来、その文化を生んだ国である日本へ帰るのです。私たちはこの文化を愛し、大切に思い、感謝しています。その気持ちを近々行われる対決で表現したいと思っています。」

マット「メガボッツのファンの皆様、いつも応援いただき感謝します。また、私たちを応援するファンでも、ライバルの水道橋重工のファンでも、私たちがエンタテインメント性にあふれ、迫力ある対決を提供できる限り、どちらのファンだとしても誇りを持ってください!」

text by Haruka Ono , photos by Protechnology JAPAN

 

メガボッツ

メガボッツ
業務内容:エンターテイメント・ロボット工学
住所:3501 Breakwater Ct. Hayward, CA 94545
代表 : Gui Cavalcanti
従業員:14
設立:2014
オフィシャルサイト: https://www.megabots.com