展示会が販売会場と化す、ミラック光学の測定工具顕微鏡

「いま、この場で、その展示品を売ってくれないか?」

測定工具顕微鏡や、位置決めに使われる「微調整摺動(しゅうどう)治具」を作るミラック光学。その製品の高い品質から、世界各国で開かれる製品見本市の会場で、毎回のように展示品の販売を来場者から求められる。主力製品の「アリ溝式ステージ」は、長いストロークを摺動させることができ、耐荷重性にも優れたスライドユニットだ。同社の職人による「匠の技」が生み出す滑らかな動きは、他社の追随を許さない。位置決め用途の標準部品や、治工具などの機械要素部品など、身近な現場作業の必需品として、広く愛用されている。

 

 

数多の特許で他の追随を許さないアリ溝式ステージ

部品の一部を稼働させ、レンズの位置決めなどに効果を発揮するアリ溝式ステージ。アリ溝式とは、断面が台形の溝を持った部品に、対となるように台形に削りだした部品を滑り込ませることで、スライド運動を行うユニットのことだ。この機構の製造には緻密な作業が求められるため、加工を施す企業は減ってきている。米国ではすでに1社もなく、日本国内でも希少な存在となっている。しかし、同社はこの技術に特化しており、他社とは一線を画す高品質、高精度、高耐久性のステージを製造し続けている。

さらに商品群に目を向けても、一般的な縦横に移動する「XY軸駆動」に留まらず、360°自由自在に動く「あおり旋回」や、ハンドル一回転の移動量を用途に合わせて2mm、5mm、10mmから選択できる「多機能送りねじ式」など、多種多様なステージを開発している。現在、国際特許を含めた知的財産は100近くに及んでおり、充実した製品ラインナップをみせている。

なかでも独創性に溢れているのが、世界初の樹脂製ステージ「スケルトン」だ。元々は、研究機関から表面処理やグリスを使わないステージの製作依頼を受けたことが、開発の出発点だった。これまでの金属製のステージは、表面処理を施さないと錆びてしまう。また、ノングリスでは滑りが悪く、滑らかな動きが実現できない。依頼を受けた当初、不可能だと考えた同社だが、発想を転換し、この業界にはなかった樹脂を使うことを思い立った。樹脂は自己潤滑性を持つためグリスを必要とせず、錆びることもないので表面処理は不要だ。これらの特性は、衛生面の観点からグリスを使うことのできない医療業界や、水中をはじめとした様々な環境下での利用を可能とし、これまでのXYステージの枠を超えた活躍が見込まれている。すでに食品業界から受注しているほか、防水仕様のスマートフォンを製造するために作業工程で水が使われる電子部品業界からも高い関心が寄せられている。展示会でもこの「スケルトン」は、ノベルティと勘違いされるほどの驚きを持って迎えられており、まさに時代をリードする商品だ。

独特で豊富な商品群を持つ同社を、さらなる高みへと押しあげているのが、顧客の要望に応じたセミオーダーの対応ができる点だ。XYステージを完成品で販売した場合、顧客が機械装置に組み込んだ際に不具合が生じることが少なくない。たとえばハンドルの位置が合わないなど、構造上の問題で作業に支障をきたすことがある。この難点に着目し、顧客が自由にXYステージを構成できるよう、各パーツを選択可能にしたのが、同社のセミオーダーステージだ。また、ステージを始め、光学系部品やスタンド、測定には欠かせないミクロメーターなど、各々の使用環境に合わせて、顕微鏡システムを構成することができる。さらに、PCやタブレットで映像をリアルタイムに確認するためのデジタルキャッチシリーズを揃えるなど、顧客の注文に応じ、痒い所まで手の届く対応ができるようになっている。現在、カタログに記載されている製品は700程だが、セミオーダー式を含めると、その製品群は何万通りにもなるという。これだけの対応力を持った企業は世界に例がなく、高性能なステージと相まって、他の追随を許さぬ懐の深さを見せている。

仕立ての良い靴のように。目指すは体の一部のような使用感

ミラック光学の強みはアイデア満載のステージと豊富な製品群だが、どんなに素晴らしい発想があったとしても、ステージの動きが滑らかでなければ、それは絵に描いた餅だ。

ステージは約20点以上の部品から構成されるのだが、図面や工作機械自体に公差がある以上、部品一つ一つにも誤差があり、表面処理の膜厚も均一ではない。そういったズレが積み重なった結果、組み立ての工程でも、多くの癖が存在してしまう。それを熟練の技で乗り越えることこそが同社の真骨頂だ。職人たちは手作業で1ミクロン単位にまでこだわって製品を作り込んでいく。職人たちは異なる数種類の紙ヤスリや自作の工具を常備し、それぞれの部品の状態に合った作業を行うことができる。また、気温によってグリスの滑りが変化するため、季節によって調合を変えるという徹底した品質管理を行っている。このような一連の技術があるからこそ、大手にも負けぬ滑らかな摺動を実現しているのだ。筆者は海外製の模倣品を触る機会があったのだが、その違いは素人目にも一目瞭然で、トルク感は全くの別物だった。この差が生む効果について、代表取締役の村松洋明氏はこう語る。

「例えば、安いだけの仕立ての良くない靴は長持ちしませんし、靴擦れを起こすこともあります。同じように弊社製品と模倣品では、作業効率や耐久性を、同列で語ることはできません。私どもは仕立ての良い靴のように、体の一部のような使用感を持った製品を皆様のもとへお届けしたいと考えているのです」

同社は単眼の測定工具顕微鏡などに特化した希少な光学メーカーだが、同社が顧客とする範囲は、顕微鏡が多く使われる品質管理部門の現場だけに留まらない。前述したアリ溝式ステージのように、産業機械をはじめとした多種多様な業界において、サポートを積み重ねてきた実績を持つ。今や、同社の視線は、まだアリ溝技術を持っていない欧米企業にまで向けられている。彼らの製品開発や製造を支援し、相互に補完し合えるパートナーを、世界に広く求めている。この同社のポリシーの根底には、「良いものを一人でも多くの人に届けたい」という、職人のこだわりともいうべき魂が脈々と流れているのだ。

株式会社ミラック光学

事業内容:顕微鏡及び光学関連機器の設計・製造 / 精密機械工具の設計・製造 / 位置決め摺動ステージの設計・製造 / その他上記に関連する周辺機器・特殊品の設計・製造

所在地:〒192-0362 東京都八王子市松木34-24

創業:1963年

代表取締役:村松洋明

従業員数:24名

TEL:042-679-3825

FAX:042-679-3827

WEB:http://www.miruc.co.jp