Headers,Formers

ネジ・ボルト成形用冷熱間圧造プレス機械の設計・製造

株式会社中島田鉄工所  View Company Info

中島田鉄工所は、世界一精密で繊細なネジを製造する機械を1世紀もの間つくり続ける工場だ。
19世紀に『東洋のエジソン』と呼ばれ、後の東芝を創業した田中久重を生んだ福岡県久留米市。中島田鉄工所は、久留米にほど近い八女郡広川町にある。 さまざまな工業製品に組み込まれるネジや金属パーツを製造するヘッダー、パーツフォーマーと呼ばれるプレス機械を製造している。 中でも2.5mm以下の製品を製造するヘッダーでは、日本シェアの約80%、世界シェアの約50%を占めている。

今回は、中島田鉄工所の強みや独自開発技術、常に独自技術を創造し続ける開発者精神、さらには『カスタマー・オリエンテッド』の精神などについて、渕上久寿部長にお話をうかがった。

技術力の高さを象徴する2つの技術

img01中島田鉄工所のヘッダーが、世界有数のシェアを握っている理由はいくつかあるが、最も大きな理由は精度の高い部品加工ができるからだ。 『ナカシマダ』ブランドのヘッダーやフォーマーは多くの独自技術から成り立っており、中でも『フィンガーレストランスファー機構』と『ダイスライド機構』という2つの技術は、『ナカシマダ』の名を世界に轟かせている。
これらの機構は、中島田鉄工所が製造するヘッダーに多い、短尺製品やマイクロ製品のヘッダーにおいて、そのポテンシャルを最大限に発揮する。

「ヘッダーやフォーマーにおける多工プレスにおいて、次の加工工程に搬送する際はフィンガーで掴んだり、蹴り出したりすることで、次の加工工程の位置に搬送されます。しかし、『フィンガーレストランスファー機構』は、フィンガーではなく金型ごと次の加工工程に搬送していきます。こうすることで加工素材のブレや回転が抑制されて精度が飛躍的に高まるとともに、同じ動作でより多くの加工を可能にします」

この機構をさらに発展させた『ダイスライド機構』は、フィンガーで掴みにくく、従来は切削加工でしか作れなかった2mm以下の超薄型部品や超小型部品をヘッダーで生産可能にすると同時に、高精度を実現する。

 

また、ナカシマダが特許を取得しつつ、他のメーカーが追従することとなった『パルスダイヤル』の技術について、渕上部長に話をうかがった。img02

「通常、プレス機械の設定を行う際は、機械をわずかずつ手動で動かしながら動きを入力していきます。この作業は、重いハンドルを少しずつ動かしながら設定していくわけですが、当社が開発した『パルスダイヤル』技術は、こうした場合に回生抵抗を使って機械的にハンドルを回転させることができます。自動車でいうパワーステアリングのような技術ですね」

この技術が搭載された機械なら、女性一人でも簡単に機械をゆっくり動かせると同時に、オペレーターの作業負担を軽減し、作業時間の効率化を図ることができる。

こうした高品質、高精度なものづくり技術が評価され、宇宙関連ユニットの開発も行っている。

 

img03「現在、役目を終えた人工衛星をスペースデブリ(宇宙ゴミ)にしない方法のひとつとして、大気圏に突入させて燃え尽きさせる、という方法があります。当社では、この手法を実現できるユニットを東北大学と共同で開発しました。そのユニットは、人工衛星に薄膜のパラシュートを付けて周回速度を落とし、大気圏へ誘導し確実に燃焼消滅させます」

この人工衛星ユニットは、すでに実用化され、ドイツのシュツットガルト大学の研究施設に納品を完了している。さらに2014年2月には東北大学にも納入が決定している。これから宇宙ビジネスが発達し、スペースデブリの問題が顕在化すれば、今後さらに注目を集めていくだろう。
真似するよりも、独自に最高の製品を
中島田鉄工所の開発者には、創業時より受け継がれている精神がある。それは『絶対に真似しない』というもの。

「どうやって真似するかを考えるなら、新しい方法でさらに良い製品を作る方法を考えるべき。コピーすると、コピー元以上の製品を作ることはできませんからね」

創業間もない中島田鉄工所で、こんなエピソードがあったそうだ。初めて海外製のヘッダーを持ち込まれて、同じ機械を作ってほしいという要望を受けた時、当時の社長は『この機械以上の機械を作りますから』と断言したという。創業以img04来、脈々と受け継がれてきた『絶対に真似しない』という社風は、中島田鉄工所が常に最高の製品を作り続けるという意思表示なのだ。

 

近年は、『パルスダイヤル』以外にも、中島田鉄工所が開発した技術や製品をコピーした機械も出現している。

「決して嬉しいことではありませんし、粛々と対応していきます。ただ、真似されるほど高い技術を我々は創造している、と考えるようにしています」

実際に、それまで使用していた中島田鉄工所の機械から、価格が安いコピーマシンに変更される事態が起こることも希にある。だが、最終的には『中島田鉄工所の機械を再び使いたい』と申し出があるという。機械や機構はコピーできても、そこから生み出される製品の品質や生産の安定性まではコピーできないのだ。
『カスタマー・オリエンテッド』の精神は、使命だ
中島田鉄工所では、『クライアントの要求に100%応える』ことが使命だと考えている。クライアントごとに異なる要望に応え続けており、現在生産する機械のほぼすべてが特注仕様となっている。

「当社にも製品カタログがありますが、まずカタログ通りの製品を販売したことはありません。お客様の要望を実現するために、必ずどこかをカスタマイズして販売することになります」

 

img05お客様の要望に100%応える機械を製造・販売する『カスタマー・オリエンテッド』の精神を貫くには、それまで無かったものをゼロから生み出す高い創造力と技術力が必要になる。

「当社の設計者は何事も『不可能』と考えるのではなく、『なんとかして実現する』という考えのもと、常に前に進み続けます。前進しなければ新しい製品はできません。そうした意識を備えた設計者や製造現場などが一体となって知恵を絞れば、意外な妙案が浮かぶから不思議です。常に設計と製造が切磋琢磨する環境が、当社製品の品質を高めているのです」
こうして設計と現場がコミュニケーションを重ねて生み出したアイディアを具現化すると、たいてい今まで見たこともないような形状の部品が数多く生まれる。

「ですから中島田鉄工所のヘッダーやフォーマーは、7割が自社生産の部品で構成されています。しかも治具から自社で作る部品がほとんど。 結果的に、一つひとつの部品を自社で作ることが各部品の精度を高め、1,000点以上の部品で構成される1台の機械の精度をも高めています。 当社のヘッダーやフォーマーの品質が高いのは、この高い自社生産比率のおかげでもあると考えています」img06

 

切磋琢磨する社内環境も、部品生産の7割を自社生産するのも、すべては『機械を作ることが目的ではなく、お客様が生産したいパーツを製造できること』が最終目的であることを全社員が共有しているからだ。
1世紀もの間刻み続けた記録
中島田鉄工所の精度や品質の源泉となっているのが『きさげ』技術。この技術は、滑り移動を行う金属平面の摩擦抵抗を減らす目的で製造時の仕上げ工程で施される、微小な窪みを付ける加工を指す。

「製造する機械の品質や高い精度を生み出すのは人間の手です。習得に多くの経験が必要なため、『きさげ』技術を身につけた職人は減少の一途。しかし、当社では製造現場にいるほぼ全員がこの技術を習得しています。『きさげ』は、当社のヘッダーやフォーマーを生産する上で必要不可欠な技術なのです」

『きさげ』を施すことで数十年稼働している機械でも摺動面が劣化せず、機械の寿命も長くなる。今では中島田鉄工所の強みのひとつとなっている技術も、決して強みとするために取り組んできたわけではない。

img07「昔は、日本のものづくり企業ならどこでもやっていた加工ですが、コスト面や技術伝承の問題から徐々に消えていきました。品質を追求する当社にとって、『きさげ』加工を施すことは当たり前なんです。コツコツと真面目に、当たり前のことを当たり前にやり続ける。日々の仕事の中で生きた技術として伝承されているのです」

日々の仕事が、他社の追随を許さない強みになった例としては、高いサポート力も挙げられる。これまでに開発・製造したヘッダー、フォーマーの設計図面はすべて保管庫に集約され、厳重に保管されている。よって、どれだけ昔の機械でもメンテナンスが可能なのだ。

 

「当社にとって設計図面は宝物という扱いです。設計図面があるから、交換部品を100%供給できる。たとえ転売された製品であっても、機械番号さえ分かれば機械が特定できる体制を整えています。最近では、50年以上前に製造された機械の部品交換依頼がありました。その機械はメンテナンスされ、もちろん現在も現役稼働中ですよ」

img08

『高品質』は世界へ羽ばたく

高精度で高品質な中島田鉄工所のヘッダーやフォーマーは、あらゆるジャンルの製造現場に存在する。

「自動車、航空機、建築、家電、IT、携帯電話や時計をはじめ、文房具ではボールペンのペン先などを作るのにも当社の機械が使われています。さらには、装飾品や医療、ファッション……。また、当社の機械であらゆる金属素材が加工されています。最近は、難素材を複雑に加工するヘッダーやフォーマーの製造依頼も増えていますね」

img10真面目にコツコツとものづくりに取り組む姿勢が、品質や技術力につながっていると語る渕上氏。目の前の利益につながらなくても新しい取り組みに挑戦するという経営者の理念こそが、中島田鉄工所最大の強みだという。

「当社は日本国内での生産を止めるつもりはありません。メード・イン・ジャパンにこだわったものづくりを貫きながら、世界中に中島田鉄工所の製品を届けていきたい。高品質、高精度というニーズは、いつ何時も万国共通のはずですから」

 

株式会社中島田鉄工所

業務内容 : ネジ・ボルト成形用冷熱間圧造プレス機械の設計・製造
住所 : 福岡県八女郡広川町大字日吉1164-4
電話番号 : 0943-32-4331
FAX : 0943-32-5134
メールアドレス : sales@nakashimada.co.jp
代表者 : 代表取締役会長 : 中島田 正徳
代表取締役社長 : 中島田 正宏
設立 : 1951年10月
創業 : 1911年
従業員数 : 130名(2013年)
オフィシャルサイト : www.nakashimada.co.jp/index.html
株式会社中島田鉄工所様へお問い合わせをご希望される企業の方は、直接上記の連絡先までご連絡をお願い致します。 お問い合わせの際はインデックスライツのポータルサイトをご覧になったとお伝えください。