打錠金型
株式会社ナンノ View Company Info日本刀の最高品質を誇るブランドとして知られる「村正」。その希代の名刀の名を受け継ぐ製剤用の金型が、現代の世に生み出された。
金型設計、製造の株式会社ナンノが開発したのは、錠剤となる粉末を圧縮成形する打錠金型「ムラマサ」。
従来品を凌ぐ耐久性を誇り、製薬業界で大きな注目を集めている。
現代に蘇る名刀!ナンノが創る打錠金型『MURAMASA』
打錠金型「ムラマサ」は、レギュラー、クリーン、ストロングの3タイプあり、それぞれの特性に合わせた錠剤製造の現場で使われている。一般的な構造用鋼で作られるレギュラーは、納期が早く、安価なのが特徴だ。クリーンは、粉離れのよいステンレスで製造され、金属の組織体を1/30に微細化する同社の特許技術を駆使し、強度と靭性(材料の粘り強さ)を高めた。
そして、主力製品となるストロングは、打錠金型では珍しく工具鋼を素材に使用している。このタイプはさらに2種類をラインナップしている。Kタイプは、粘りを強化しており、特殊な異型錠で真価を発揮する。もう一つのSタイプは極限まで強度を高め、通常の限界値を大幅に上回る耐久性を実現した。固い薬剤で作る錠剤は高圧が必要とされるのだが、Sタイプを超えるような品質の金型を探すことは困難だ。
ストロングタイプで他企業が利用しない工具鋼を素材に使った秘密は、同社の原点に隠されている。構造用鋼よりも高い硬度を持ち、加工の難しい鋼材だが、創業以来、自動車産業において、この素材を加工する技術と経験を培ってきた。
さらにその技術を唯一無二な存在へと引き上げているのが、同社が保有している塩浴炉を使用した特殊な熱処理にある。
国内でも珍しいこの炉は、多くの熱処理業者がもつ真空炉ではできない急加熱、急冷を可能とし、結晶粒を丁寧に焼くことができる。その結果、もともと硬度の高い工具鋼を、より割れや欠けに強い金型へと進化させる。
さらに、打錠メーカーとしては唯一、熱処理設備をもつ同社では、他社には決して真似のできない特殊な構造をした杵の開発に成功している。通常の杵では製剤を圧縮する杵先から、打錠機に繋がれる杵頭部まで、全体が同じ硬度となっている。しかし、同社のように高い硬度をもつ杵は、錠剤成型時の圧力により、打錠機と杵を繋ぐ接合装置を破損させてしまう。この問題を解決するため同社では、杵先には高い硬度を与える熱処理を施し、杵頭部ではあえて硬度を抑えた焼き入れを行っている。
この独自技術によって作られた杵は2種類の硬度を持ち、硬さを保ちながら打錠機をいためない、他と一線を画した杵となっている。
錠剤成形において、問題点となっている打錠機性能の向上も、同社の杵の硬さが有効性を示す。
近年、打錠機の回転速度は飛躍的な上昇を見せており、打錠前の薬剤を本体に置く時間が短くなる分、製剤に圧力をかける時間が短くなっている。柔らかい杵では圧力をかけるとたわみが発生し、十分な圧力をかけられない。
そのため、錠剤の固さが不足し、打錠機の速度を落とさざるえなくなる。しかし、硬い杵であればたわみを抑えることができ、迅速な荷重が可能となる。打錠金型の硬さが物をいう時代に入ったいま、ムラマサの需要は増加が見込まれている。
同社のオリジナリティは、後半工程の表面処理にまで及ぶ。現在、流通する打錠の80%には硬質クロムメッキが施されている。
だが、これは六価クロムを使用するため、環境面の問題が指摘されている。製薬という性質上、安全を重要視する同社では、表面処理をメッキからセラミックコートに移行させている。
また、多くの企業が金型にコーティングを行っているが、現在の主流は窒化クロムとなっている。
同社はさらに一歩前進し、他社に先駆けて高強度の表面処理が可能なN2000をストロングタイプに採用済みだ。N2000のコーティングを施す打錠メーカーはナンノ1社で、他企業に追随を許さない耐摩耗性をムラマサにもたらしている。例えば、メッキ処理の杵では、平均的な連続荷重は2000〜4000時間とされる。
ここに酸化マグネシウムなどの固い薬剤を投入した場合、300〜500時間で杵の交換が必要となる。この場面において、ストロングを打錠機に導入すると、杵の寿命は4000時間にまで復帰し、絶大な効果をみせる。
様々な独自技術で彩られ、驚異的な強さを発揮するムラマサは、日本の錠剤業界を支える唯一無二の存在となっている。
打錠金型の世界をリードせよ!
ムラマサの成功事例には枚挙に暇がない。なかでも、その力を端的に表したイベントを紹介したい。
「カラテ錠」という特殊な錠剤を得意とする製薬会社が、国内外の打錠メーカーを集め、各社の性能を競わせた。簡単に半分に割ることができる特徴をもったカラテ錠の成形には、強度の高い杵が不可欠だ。各社が緊張する中、圧力検査が実施されるが、全ての企業は1t程の荷重で金型が割れた。
唯一、同社の持参したストロングタイプは1.5tの圧力に耐え、契約を勝ち取るに至った。さらに驚くべきことに、同社の解析では1.9tまでの荷重が可能という。このような同社の品質について、代表取締役の南野重雄氏は語る。
「短納期で安定して品質の製品を提供するシステムには、社内一貫製造を欠かすことはできません。
外注に出すと価格の面において有利になりますが、どうしても目の届かない所が出てきます。その点、一貫製造では、おかしな点があれば直にフィードバックをし、修正が可能です。また、加工に留まらず、検査を最大の要とし、弊社では三次元測定器を始めとする検査機器の投資を進めてきました。確かに、検査機器は利益を生み出す物ではなく、一つ一つの製品価格は他社と比べて安いといえるものではありません。しかし、いくら安価でも寿命が短くては多くの製品を買わなくてはならず、長期的な視野に立った場合、日本で最も強い弊社の金型がお客様のコスト削減に繋がると自負しております」
安価な物を次々に買い替えていくのも一つの方法であり、海外市場では主となる考え方だと同氏は指摘する。
しかし、日本式の高品質製品をトータルで判断するやり方を少しずつ広め、徐々に共感の輪を拡大させることが、同社の狙いとなっている。
株式会社ナンノ
業務内容:金属加工業(粉末成形金型 / 自動車・建築・半導体業界向け金型 / 金属熱処理業)
本社住所:〒579-8014 大阪府東大阪市中石切町5-9-26
代表取締役:南野重雄(Shigeo Nanno)
創業:1975年3月
従業員数:82名
電話番号:072-981-6911
FAX:072-981-6913
WEB:http://www.nanno.jp/index.html
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