アルミの板とパイプを一体化して鋳造する「パイプ鋳込み」。板の厚さは8mm。パイプの直径は6m。両者の間隔はわずか1mmで最小で0.5mmまでクリアランスが可能という、驚くべき精度で鋳造する独自技術を持つのが、栄鋳造所だ。この技術を使った主力製品「水冷式薄型冷却プレート(コールドプレート)」は世界の大手半導体メーカーで採用され、その高い技術力は、既に世界で注目を集めている。同社はさらに、コールドプレートを応用した新たな循環型熱移動システム「アクアシステム」や、鋳物製の高性能スピーカー「KOON」など、高い鋳造技術を核にしたユニークな自社製品を矢継ぎ早に開発する。社内の多国籍化にも力を入れており、日本で初めて難民申請者を積極的に雇用した実績もある。鈴木隆史社長は「日本で磨いたものづくり技術で、世界に挑みたい」と語り、世界への挑戦に向けた歩みを、着実に進めている。

小型•薄型でどこにでも設置可能 熱移動アクアシステム

「コールドプレート」は、アルミ鋳物プレート内部に一体化した金属パイプへ冷媒の液体を流し、基板などの発熱体から熱を奪う冷却システムだ。アルミの高い熱伝導性を利用し、空冷よりはるかに高い効果を誇っている。栄鋳造所は、砂を減圧し砂型を成形する高度な鋳造法「Vプロセス」で、コールドプレートを製造する。従来、切削で製作していたプレートよりもコスト面、形状の自由度に優位性がある事と独自工法を合わせて、却効果の高い薄型のプレートを生むことができる。同社はこの技術を生かし、新たな循環型熱移動システム「アクアシステム」を開発した。

アクアシステム(Heat)は、ヒーターを挟み込んだプレート内部のパイプに水を循環させ、熱源から別の場所へ熱を移動させる仕組みだ。例えば、家の部屋の中でプレートを加熱し、パイプを通じて温水を屋根に伝えることで、その上に降り積もった雪を融かすことができる。また床暖房や、魚の養殖用の恒温水槽など、利用範囲は広い。従来、水による熱移動システムは大型で設置が難しく、とくに家庭用では実用的ではなかった。このため屋根の融雪やロードヒーティングには、直接電気ヒーターを使ったり、地下水をくみ上げたりしていたため、コストや環境面での問題が多かった。

栄鋳造所は、アクアシステムを次世代の主力商品と位置づけている。自社鋳造で自由にプレートを成形できる利点を生かし、開発時は、プレートの形状を何度も試作し、小型で効率的、さらに故障も少ない形状を突き詰めた。パイプラインは細く、しかも放熱を抑えてエネルギー効率を上げるため、シリコン素材の塗装剤も採用し、性能を向上させ、ランニングコストを抑えることにも成功した。アクアシステムは2016年中には商品として販売を行う予定だ。

 

ごまかしがきかない重量級スピーカー

SF映画に出てくる小型宇宙船のような曲線を帯び、重量感のある黒塗りのボディが鈍く輝く。一見すると謎の物体。そのブラックホールのような筐体から発せられるのは、目の前で楽器を生演奏しているような、臨場感のある音響だ。身体に響くしっかりとした音を出すその正体は、新開発されたアルミ鋳物性の高性能スピーカー「KOON」だ。その重量は 15kg、ボディの厚さは約10mm。持ち上げてみると、ずしりとした重さが手に残り、KOONが金属の鋳物であることを実感する。いったいなぜ鋳造でスピーカーを作る必要があったのだろうか。

自然界における音波の発生は球面波に由来しているが、従来の四角いスピーカーは平面で構成されていて音波の反射が多く、実は歪んだ不自然な音になっているのだという。一方、KOONは球形なので音が球面状に広がり、自然音に近く心地よく響く音を奏でることができる。開発に携わった同社工場長の神藤誠は、「上手い演奏は上手く、下手な演奏は下手なまま再生する。素直で、ごまかしの効かないスピーカーだ」とKOONの特徴を表現する。

従来のスピーカーは、製造のしやすさと、コストを抑えるため「四角い箱」で作られている。しかし栄鋳造所は、理想的な音を目指し、困難を自らに課すことで自社の技術力をさらに引き上げるため、大きくて重く、球形の筐体の鋳造に挑戦した。実現には、想像以上に困難を要したが、同社の工場に根付いた、いっさい妥協しない職人気質が、KOONの製造にも存分に発揮された。音の調整には専門の音響メーカーの協力を仰ぎ、試作と試聴を繰り返してプロフェッショナルな製品としての品質も確保した。

KOONは、同社が拠点とする東京•八王子市の有志が集うIJJという中小企業組合の力も結集して開発した。大企業の下請けに甘んじることなく、B to Cの独自製品を作りたいという狙いがあった。今後、栄鋳造所はKOONをさらに改良し、独自形状のスピーカーを開発する予定だ。さらにユーザーの用途に応じて大型、小型のバリエーションも製作する。同社はスピーカーに続いてドラムのスネアも鋳造で製造し、現在試作を進めている段階だ。

 

「難民」の雇用でさらなる国際化を進める

栄鋳造所は、戦略的に「難民」申請者や外国人の雇用を進めることで、事業のグローバル化を図っている。日本ではじめて難民申請者を積極的に雇用し、社内の多様性を進めたことが評価され、2015年には、経済産業省が主催するダイバーシティ経営企業100選に選ばれた。同社には現在4名の難民申請者が勤務しており、これまで計9名が働いてきた。他にも韓国など海外からインターンシップを随時受け入れている。現在、栄鋳造所の売り上げの半分以上は海外企業との取引となる。社内では、英語、韓国語をはじめ、7か国語による対応が可能で、24時間以内に一次回答が出すというスピード感をもって、海外企業への対応を行っている。今後、さらにグローバル化を進めており、3月には同社の海外4支店目がソウルに立ち上がり、現インターンシップ生を候補者として2~3名が従事する。以前は日本のどこにでもあるローカルな町工場だった栄鋳造所。今、磨きをかけた鋳造技術と独自製品を携え、世界の大海へ漕ぎ出そうとしている。

 

株式会社栄鋳造所

業務内容:Vプロセス工法、パイプ鋳込み
本社住所: 〒192-0154 東京都八王子市下恩方町350番地
電話番号 : 042-651-9790
創業 : 1952年
オフィシャルサイト: http://www.sakae-v.com

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